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【書評】伝え方が9割

 

伝え方が9割

伝え方が9割

伝え方が9割

伝え方が9割

 広報力がないことを除いては優秀な奴が埋もれ、広報力のある無能な奴がのさばる社会のなんと非合理なことか。どうやらこの世界にはロジック以外の要素がかなり大きな影響力を持っているらしい。

 そんなことを考えているときに出会ったのがこの本だ。

 

 著者の佐々木圭一さんは博報堂出身で、現在は「コピーライター・作詞家・大学非常勤講師」という肩書をお持ちとのこと。まさに、”伝える”ことのプロフェッショナルであるといえる。そんなこともあり、本書は全体を通じてリズム感があり、非常に読みやすかった。また、冒頭には「手帳にはさめる超短小版『伝え方が9割』」と題された、本書のダイジェスト版が付けられている。キリトリ線がついているため、切り離して持ち歩けるようになっていて便利だ。「本を持ち歩かず、伝え方を持ち歩こう」というコンセプトの通り、本書の内容がすべて簡潔にまとめられていてわかりやすい。これさえ持っていれば、自分にもうまいフレーズを作り出すことができそうだと感じさせてくれる。

 

 本書は、人の心を揺さぶる言葉の作り方を教えてくれる、言わば「コトバのレシピ本」である。デートのお誘いや就職面接、商談のプレゼンなど、人生の分岐点となるような大事な場面において、「イエス」と答えてもらえる確率を少しでも高めることができれば、人生が大きく変わってくるはず。伝え方の巧拙というものは感性やセンスの類で決まるのではなく、テクニックの部分が非常に大きい。そういった、著者がコピーライターとして働いた経験の中から苦しんで産みだされたノウハウを私たちに提供してくれる。

 

 「イエスに変える3つのステップ」

 「イエスに変える7つに切り口」

 「強いコトバを作る5つの技術」

 という、大きく分けて3つのテーマで展開され、それぞれ具体的な使い方だけでなく、練習問題まで用意してくれている。一生懸命考えて出した自分の答えが模範解答に近ければ、達成感や喜びを感じることができ、その点でも読後感の良い本である。もちろん、きちんと本文を読んでいけば、必ず模範解答相当レベルの解答を導くことができるはずなので、安心していただきたい。

 

  また、これらのテクニックは、個人間のやりとりだけではなく、もっと広い範囲に応用することができる。当然、企業の広告のような、不特定多数に向けて発信するようなシチュエーションまでもが守備範囲だ。

 「本当にいいものは何もしなくても売れる」

 そう信じて経営を行ってきた日本企業たちに足りなかったのは、人の心を動かす広報力であると、今さらながら改めて強く感じさせてくれた。

 

 伝え方がうまくなりたい。「うまいかへた」だったらどうせならうまい方に立ちたい。そんな気持ちを持っている方にはぜひお勧めしたい一冊だ。

【書評】統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である

統計学が最強の学問である 西内啓 ダイヤモンド社

 

 最近「ビッグデータ」が気になる。「ビッグデータ」って金のにおいがする!「ビッグデータ」ってモテそう!っていうかそもそも「ビッグデータ」って何?・・・そんな方たちにおすすめの一冊。かく言う僕自身も、「どうせビッグデータなんて、“IT系”な人たちの専売特許なんでしょ」「わたくしみたいな経営学部卒の文系には全く関係ない世界なのよね」とぷりぷりしていた側だったのだが、本書を読んで見方が変わった。ある程度統計学の知識があれば、何とか食らいついていけそうな分野だということが分かった。そりゃあ、大量の情報を最先端の機器を用いて分析し、イカしたソリューションをクライアントに提供し、ベネフィットを創造するとともにイノベーションの種を撒くみたいなことをやるためにはたくさんのお勉強と訓練が必要になる。ただ、僕みたいに「統計学?ああ、大学で学びましたよ。(4単位分だけ)」な感じの人でも、少なくとも「ビッグデータ?ああ、それはね・・・」とドヤ顔で語るレベルには持っていくことはできるのだ。

 

 (ここからドヤ顔)とりあえず、本書の内容に沿って、ビッグデータとはなんなのかを簡単に説明したい。ビジネスに用いられる「データ」と呼ばれるものは、商品の仕入れ、在庫、売上のようなものから、顧客のプロフィールや購買履歴、従業員の勤務時間や健康状態まで、あらゆる範囲に及んでいる。ITの進歩によってそれらのデータは電子化され、必要なソフト(一番簡単でメジャーなのはexcelでしょうか)さえあれば、簡単に集計したり分析したりできるようになった。ビッグデータとは、ものすごい大量に集められたデータたちの集合を表す。ただ、一般的に「ビッグデータ」といえば、データそのものよりもビッグデータを用いて「ビジネスの役に立ちそうな情報」「ビジネスインテリジェンス」を導き出していく作業を指すことが多い。(ここまでドヤ顔)

 

 本書は、「データ社会を生き抜くための武器と教養」である統計学について、さまざまなシーンにおける利用法を具体的な例を挙げながら説明してくれる。それと同時に、世間に跋扈する「意味のないデータを出してくるマーケター」への批判もされていて、ともすればそのような意味のない分析に丸め込まれて納得させられてしてしまいそうな僕もはっとさせられることが多い。

 

 本書に関連して、最近(日付失念。新聞切抜きするのは良いが、日付を書いておくのを忘れてしまう)日本経済新聞でも取り上げられていた「データサイエンティスト」の記事も興味深かった。データサイエンティストとは、まさしくビッグデータを活用し、マーケティングなどに生かすために分析する人材だ。この記事の中に、データサイエンティストに求められるスキルとして、プロジェクト管理やマーケティングなどの「ビジネススキル」、各種ソフトの操作技術や大量データの収集ノウハウなどの「ITスキル」、統計解析やデータのモデル化のノウハウなどの「分析スキル」の3つが挙げられている。しかも、どれか一つだけではなく、すべてをバランスよく備えていることが必要とのこと。どれもこれもが付け焼刃では身に付かない、非常に習得困難なスキルばかりだ。そんなこともあり、日本では今のところ1000人にも満たない人数しかいないとの推計もある。さらに、2018年には米国だけで14万から18万人の不足が発生するとも言われている。需要と供給が全くかみ合わない、まさに「求められる人材」だと言える。

 

 日経新聞の記事とも合わせ、知識というものはそれだけではそれだけに終わってしまい、実践で役に立つスキルに昇華させることなしには役立たずであると痛感した。ドヤ顔ばかりしていないで、他人にはないスキルを追求していくことの必要性を強く感じさせてくれる一冊だ。